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NAD+レベルを追跡:脳から血液へ

 

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ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)レベルは、齧歯動物モデルでは加齢とともに減少する。この減少は老化関連疾患と関連し、細胞の核と『発電所』であるミトコンドリアに異常を引き起こす。2015年、ミネソタ大学の科学者らは、ヒトの加齢に伴うNAD+レベルのこれらの同じ減少を初めて発見した。学術誌『米国科学アカデミー紀要』(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)に発表された方法は、科学者らが加齢性疾患の治療の異なる段階でNAD+レベルを追跡するのに役立っている。

(Zhu et al., 2015|『米国科学アカデミー紀要』)

科学者らは、代謝に関与する分子の濃度を評価することによって代謝の変化を追跡する非侵襲的な技術である磁気共鳴分光法(MRS)を使用した。
彼らは、MRSを脳の後頭部の後頭葉に向かって特定の領域に適用し、NAD+とNADHを測定した。研究者らは、MRSで測定したNAD+のレベルには、年齢とともに目に見える違いがあることを発見した。観察結果を確認するために、NAD+、NADH、およびNAD+とNADHの合計である総NAD濃度を年齢とともにプロットした。プロットは、NADHが増加する一方で、総NAD濃度とNAD+濃度は年齢とともに低下していることを示した。

(Zhu et al., 2015|『米国科学アカデミー紀要』)

その結果、NADH濃度には正の年齢相関が、NAD+濃度と総NAD濃度には負の相関が見られた。これらの知見の生理学的意義から、ヒトでは加齢とともにNAD+濃度が低下することが示唆されている。科学者らは、NAD+濃度がげっ歯類の脳で行われた同様の研究から予想される範囲内であったと指摘している。
「本研究に報告されたヒトの脳のNAD内容物および酸化還元状態は、健康なヒトと病気のヒトの脳におけるNADおよびNAD+/NADH酸化還元状態の役割とその変化を理解するために有用な参考になると期待される」と科学者らは研究で述べた。
彼らは、この方法を応用して、病気のある脳と健康な脳のNAD+濃度を年齢とともに比較することができるだろう。この研究では、特定の脳領域におけるNAD+とNADHのレベルを観察したが、他の研究者はこの方法を脳全体に適用することも可能である。研究者らはまた、細胞内のNAD+濃度をモニタリングすることによって、疾患治療や治療介入の有効性を評価するためにMRSを利用することも可能である。
「この新しいNADアッセイは、細胞内NADの可用性、NAD+/NADH酸化還元状態、ミトコンドリア機能不全、神経変性、老化、および長寿との関係を研究することを目的とした生物医学および/または臨床研究分野において非常に価値があると予想される」と科学者は指摘した。
他の科学者らは、ヒトにおけるNAD+定量の新しい方法を開発し続けた。2019年12月に『Nature Metabolism』誌に発表されたより最近の技術では、NAD+と結合すると青色から赤色に変化する半合成発光タンパク質であるバイオセンサーを用いて、血液サンプル中のNAD+を検出することが含まれている。この方法により、患者が医師と面会した時点で、血液中のNAD+を迅速に定量することが可能になるという。
MRSを用いてヒトの加齢に伴って脳内のNAD+レベルの低下を発見した研究では、げっ歯類における同様の知見を裏付ける証拠が得られた。科学者らが年齢とともにNAD+レベルが減少しているという証拠を集め続ける中、加齢によるNAD+レベルのモニタリングが重要になってきている。将来的にはより新しく、より費用対効果の高いNAD+モニタリング技術により、科学者らはより多くの人のNAD+レベルを追跡し、病気の治療法を改善することができるようになるかもしれない。

出典
情報源:
Xiao-Hong Zhu, Ming Lu, Byeong-Yeul Lee, Kamil Ugurbil, Wei Chen. In vivo NAd assay reveals the intracellular NAD contents and redox state in healthy human brain and their age dependences. Proc Natl Acad Sci U S A, 2015: DOI: 10.1073/pnas.1417921112.

参照論文:
Shin-ichiro Imai, Leonard Guarente. NAD+ and sirtuins in aging and disease. Trends Cell Biol, 2014; DOI: 10.1016/j.tcb.2014.04.002.
Qiuliyang Yu, Narges Pourmandi, Lin Xue, Corentin Gondrand, Sebastian Fabritz, Daniel Bardy, Luc Patiny, Elena Katsyuba, Johan Auwerx, Kai Johnsson. A biosensor for measuring NAD+ levels at the point of care. Nat Metab, 2019; DOI: https://doi.org/10.1038/s42255-019-0151-7.

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この記事を書いた人

NMNの魅力に取りつかれた研究者です。めちゃくちゃ良い成分なのに、粗悪品が出回ってきてしまっているので、読者の方々が良い製品に出会えるように良い情報を届けられるように頑張ります!

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