しかし、ハーバード大学の研究者らは、テロメア延長酵素であるテロメラーゼの活性を回復させてテロメア長を救うことができる小分子を発見しました。 4月21日にCell Stem Cellで発表された新しい研究は、まれなテロメア疾患から老化に至るまでの病気の治療への道を開くかもしれません。
しかし、ハーバード大学の研究者は、テロメラーゼ(テロメアエロンガーゼの一種)の活性を回復させ、それによってテロメアの長さを節約できる小分子を発見しました。『Cell Stem Cell』(4月21日付)に掲載されたこの新しい研究は、稀なテロメア疾患から老化に至るまでの病気の治療への道を開くかもしれません。
10万個以上の小分子をふるいにかけて、研究者らは一つの新規化合物BCH001を特定しました。それは先天性角化不全症の患者の細胞の老化プロセスを著しく逆転させるようです。「先天性角化不全症」という難病は、短いテロメアによって知られているまれな遺伝病です。「テロメラーゼ」という酵素はテロメアの構造を健全に保つ一方、テロメラの形成と機能を破壊し、細胞の早期老化も引き起こします。
アガルワル氏らは、「TERC」というテロメラーゼを構成するサブユニットを処理・安定化させる役割を担っている2つの遺伝子「PAPD5」と「PARN」を特定しました。 「PAPD5」は、陰と陽の相反する力として働き、未熟なテロメラーゼを分解経路に導きます。一方、「PARN」は、成熟経路に沿ってテロメラーゼになります。ところが、テロメア疾患の遺伝子変異の1つ遺伝子が突然変異してしまうと、「PARN」のレベルを低下させます。 「PARN」のレベルが下がると、分子スケールは「PAPD5」の方向に傾き、テロメラーゼを分解に導き、損傷したテロメアを修復できない細胞を残します。
この治療法が安全かどうかをテストするために、研究チームはテロメアの突然変異を起こしたヒト血液幹細胞をマウスに移植し、PAPD5阻害薬であるRG7834を経口で投与し治療を行いました。経口分子はTERCの成熟を促進するだけでなく、移植された幹細胞のテロメアの長さが回復させます。それでいて副作用は出ないことが確認されました。
「臨床治療になるかもしれないと希望を抱かせてくれます」と、ナグパル氏(Nagpal)は記者会見で期待をにじませました。この研究では、BCH001とRG7834が新しいテロメラーゼ治療薬になることが期待されていることがわかりました。
「幹細胞のテロメアの回復により、血液、肺、その他の臓器の組織再生能力が改善され、先天性角化症やその他の疾患の影響を受けると予想されますとアガルワル氏は記者会見で付け加えました。今後、研究チームはさらに実験を続け、テロメア維持の欠陥によって引き起こされる他の疾患、さらにはより広範なアンチエイジングにおけるPAPD5阻害の潜在力を掘り出していく予定であるそうです。
参照論文
Nagpal et al., 2020, Cell Stem Cell 26, 1–14 June 4, 2020 a 2020 Elsevier Inc. https://doi.org/10.1016/j.stem.2020.03.016.